英語で朝の挨拶は「Good morning」ですね。直訳すると「良い朝」です。
でもこれ、よく考えると変な挨拶に思えてきませんか?「良い朝」がつまり何なのでしょう。
どんな言語でもそうですが、挨拶というのは相手に良い気持ちになってもらうために交わす言葉です。その視点を持って言語の仕組みを紐解いてみると、この「Good morning」という短いフレーズに込められた本当の思いが浮かび上がってくるのです。
ドイツ語は英語の兄弟分
挨拶の意味を紐解くにあたり、少しばかり英語のルーツをさらってみましょう。
そもそも英語という言語は、インド・ヨーロッパ語族という大きなグループの中で、ゲルマン語派という分類に属しています。共通の祖語を持つゲルマン語派の仲間にはドイツ語、オランダ語などがあります。
英語はこれらの中でもかなり簡略化が進んでいる言語なのですが、一方のドイツ語などはゲルマン祖語の特徴を今なお色濃く残しています。「英語はドイツ語から発展した」というと多分に語弊がありますが、細かな議論はさておいて、ドイツ語は英語の兄貴分のようなものだと思ってください。
そのドイツ語では、朝の挨拶は「Guten Morgen(グーテンモルゲン)」といいます。Gutenは英語のgoodと、Morgenは英語のmorningとそれぞれ同じ言葉です。この「Guten Morgen」の意味を考えれば、自ずと英語の「Good morning」の意味も見えてくるのです。
ドイツ語文法がわかれば挨拶の意味がわかる
ドイツ語には、英語にはない(簡略化されて廃れてしまった)文法要素として「名詞の格変化」というものがあります。ドイツ語の格変化は、文の主語になる「主格」、所有を表す「属格」、動詞の間接的対象を表す「与格」、動詞の直接的対象を表す「対格」の4種類があり、名詞に付く冠詞(英語のaやtheのようなもの)や形容詞の形がこれに合わせて目まぐるしく変化するのです。
さて、「Guten Morgen」という挨拶に現れる「guten」とは、「gut(良い)」という形容詞が格変化して「対格」になったものです。対格は日本語で言えば「を」に相当します。
つまり「Guten Morgen」とは、「良い朝を」と言っているのです。その前後に続く文脈は、「良い朝をお迎えください」とか「良い朝をお過ごしください」などでしょう。ということは、この挨拶は、「今朝は良い朝ですね」と見たままの事実を述べているのではなく、相手が「良い朝を」過ごしてくれるよう祈る言葉だったのです。
ドイツ語の血を直接引いている英語でも、勿論その意味は同じです。「Good morning」という表現には、相手の今日一日の幸せを祈る気持ちが含まれていたわけです。
言葉の原義を意識して口にすることで、より相手を思う気持ちが伝わるかもしれませんね。
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