宮大工は、神社仏閣・城などの建築や修理、また国宝や重要文化財の修理を専門とする大工さんです。
しかし、それら建築物は一般住宅に比べて破格の規模で、使う材料の大きさや量は桁違いとなります。また完成までの工期が長く、数多くの職人さんが集まりますから、大勢の目的意識を一つの方向にまとめる「棟梁」には、豊かな才覚が求められます。
その棟梁のために、宮大工が代々伝えてきた「口伝」があります。棟梁としての心構えを説いたものですが、意外にも、これは現代ビジネスも通用する、非常な示唆に満ちているのです。それを幾つか見てみましょう。
大きな視野に立つ
「堂塔の建立には木を買わず山を買え。」
巨大建築を建てるには、木ばかりを見てはいけない。その木が育った風土、気候、環境、地形など全てを見て判断せよ、ということです。
ビジネスにおいても、同様のことが言えそうです。ものごとの判断には、時に、大きな視野に立つことが求められます。
人を生かす
「木は生育の方位のままに使え。」
山に生えている木を建築物に使う際は、木が育った方位のまま配置すれば、建築物が長持ちするのです。
まさに、適材適所。木も人も、能力を発揮できるように配置するのがいいということですね。
管理者の心構え
「堂塔の木組は木の癖組。木の癖組は工人たちの心組み。工人等の心根は匠長が工人への思いやり。」
「百工あれば百念あり。一つに統ぶるが匠長が裁量也。」
右にねじれている木もあれば、左にねじれている木もあります。両者を上手に組み合わせると、頑丈な建物ができます。
また木も人も、様々な癖、意見考えがあります。それらをどうまとめるかは、匠長の裁量にかかってきます。
口伝は宮大工の西岡常一氏が伝えた言葉で、他にもあります。実は氏の著作物は、経営者層の間でよく知られており、現代ビジネスでも学ぶべき内容にあふれているのです。
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