9月に最終回を迎えたテレビドラマ『HERO』ですが、今年の全ドラマの中で最も人気だったと言われ、平均視聴率は21.3パーセントにも達したと言われています。
木村拓哉さん演じる久利生検事が様々な事件を解決していく姿は非常にかっこよく、そこまでの人気が出るのも納得できますよね。
しかし、実はこのドラマの最終回での久利生検事のある行動が、一時期物議を醸したのを、皆さんはご存知でしょうか?
それは、彼が亡くなった鍋島検事の墓参りに来た場面。
久利生は火のついた線香を持って、そのまま息を吹きかけてその火を消したのです。
演出とはいえ、小さい頃から誰もがマナー違反だと教えられてきた行動に、疑問を抱いた方も少なからずいたのでしょう。
確かに、この行為はマナー違反なのですが、なぜ、線香の火は息を吹きかけて消してはいけないのでしょうか?
という訳で今回は、なぜ線香に息を吹きかけてはいけないのか、について考えていきたいと思います。
なぜ線香に息を吹きかけてはいけないのか
灰が散らばってしまうから、つばが飛んでしまうからなどの物理的な意味合いも大きいですが、一番の理由は線香と口、それぞれが仏教の中で持つ意味合いによるものが大きいでしょう。
まず、線香を焚く意味合い、これは大きく分けて二つあります。
①自身と場を清める
インドでは、もともと、高貴な人に会うときにはお香を焚いて自分や周りの悪臭を消す、という習慣がありました。その習慣がもとで、仏様の前でもお香(線香)を焚いて、自分の身と周りを清めるという風習ができたそうです。
②仏様に香りを供える
仏教では、亡くなった人は皆香りを食べる、と信じられており、生前に善行を積んだ人はいい香りを、悪行ばかりの人間は悪臭しか食べることができない、とされています。
ですから、線香を焚くことによって仏様が食べる香りをお供えする、といった意味合いを含んでいると同時に、仏様が善行をたくさん積んで今幸せに暮らしていることを祈る気持ちも含まれます。
このように、仏教における線香というのは非常に神聖なものと考えられているのです。
一方で人間の口は、身体・意識とともに「身口意」と言われ、人間の全ての悪い行動はこの3つのうちどれかから生まれると言われています。
つまり、口は悪い行動を生み出す原因だと考えられ、汚らわしいものだと考えられているのです。
そのため、神聖な線香の火を汚らわしい口から出た息で消すのは無作法、ということになるのです。
ちなみに、手も身体の一部なのでは?と思った方もいらっしゃると思うのですが、数珠を持ったり、蝋燭や線香の火をつけたりする手を使うことで、せめてもの善を積もう、ということです。
口で火を消してはいけない、ということは常識として知っている人が多いと思うのですが、理由を聞くと奥が深くて納得してしまいますよね。
常識、マナーといわれている行動の裏にはきちんとした理由があることが多いのですが、あまりにも当たり前すぎてそれを考えることはあまり無い気がします。
しかし、その理由が忘れ去られてしまうと、そのマナーや常識自体がうやむやになってしまうことにもつながりかねません。
マナーの理由を知ってこそ紳士の鑑ですね。
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