大きな寺院には五重塔が建っています。
美しく力強い姿で高くそびえる塔は、寺院のシンボルとしてあるだけでなく、地震に極めて強い柔構造をしているなど、構造的にも優れています。夕焼けにそびえる五重塔は、日本人の原風景でもありますよね。
そもそも五重塔とは、どんな目的で建ってあるのでしょう。
五重塔の起源
古代インドにおいて、釈迦の遺骨(仏舎利)をまつるために作られたのが仏塔の始まりです。
その目的から、多くの方が拝めるように目立たせる必要がありました。結果、仏塔は高くなり、中国経由で仏教が日本に伝来してきて日本流の今の形になりました。塔を拝むことは、仏舎利を拝むことになります。多くの方が遠くからも拝めるよう、塔は高くなったと言えます。
五重塔も卒塔婆も起源は同じ
仏教がはるかな時間と空間を経てインドから渡ってくる過程で、その国の文化の影響を受けて寺院形式も様々な形になってきました。中国や韓国にも五重塔はありますが、それらは最上階まで登れるものが多いです。対して日本では、1階部分にしか入れない塔が多いです。
そして日本では、さらに派生したものがあります。
釈迦が生きた古代インドのサンスクリット語では、塔を意味する言葉は「ストゥーパ」と発音しました。サンスクリット語は梵字とも言い、今でも寺院でひらがなをくずしたような字体を目にすることができます。
その「ストゥーパ」に漢字をあてはめたものが「卒塔婆」です。したがって、これは「そとうば」と読みます。今では、卒塔婆は先祖供養のために立てられることが多いですが、言葉から元をたどれば、起源は五重塔と同じなのです。さらに言えば、卒塔婆を略して「塔婆」とも言いますし、さらに略したのが「塔」なのです。卒塔婆、塔婆、塔。どれも同じ仏塔を指しているわけですね。
これらを知ったうえで改めて五重塔を見ると、また違って見えてくるかもしれませんよ。
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