毎年年末になると日本全国で、ベートーヴェン作曲の第9交響曲「合唱」(略して第9)が演奏されます。
いわば年中行事化していますが、そもそも、何故年末に第9が演奏されることになったのでしょうか。
楽団員の「餅代かせぎ」
オーケストラ(楽団)の運営とは難しいものです。楽団の運営資金元は、スポンサー、定期演奏会の入場料、CD販売収入ですが、クラシック音楽の愛好家が少数派であることもあり、なかなか一定の収入を見込むことは困難です。
しかしながら、合唱曲であれば楽団員の他にコーラスも参加しますから、まず出演者の人数が多くなります。さらに、出演者の友人知人が観客として来ることで、多くの来場者が期待できますね。
コーラスもプロを雇ってしまうとコストはかさみますが、学生などのアマチュアに頼めば出演料もあまりかかりません。
戦後の日本において、そういう観点から第9演奏が始められたと言われます。いわば、楽団員の「餅代かせぎ」としての意味合いです。餅代と言っても、実際に餅を買うわけではなく、正月を迎える前の年末に得られる、特別な収入という意味あいですね。
年末の「シメ」としての意味合い
そしてもう1つ、ベートーヴェンの第9ならではの意味があります。
これは彼が書いた最後の交響曲であるおと共に、人声を初めて交響曲に用いた革新的な曲であり、全曲演奏するのに1時間10分もかかるという大曲です。
音楽史上最も偉大な作曲家の、最も巨大な曲を聞いて1年の「しめ」にしようという意味からも、好んで演奏されるようです。
それは洋の東西を問わず同じであるようで、1951年、戦後初めて開催された記念すべきバイロイト音楽祭では、名指揮者フルトヴェングラーによって第9交響曲が演奏されました。
第9を実際に聴いてみると分かりますが、ベートーヴェンの苦悩が直に伝わってくるような、誠に巨大かつ偉大な音楽です。
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